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NTTの自縛   最近よく目にするNGN(次世代ネットワーク)とは、インターネットと同じプロトコルを利用して、一つの回線で固定・携帯電話、データ通信、映像まで提供する仕組みだ。NGNによって、音声や映像の品質が向上・高速化し、セキュリティーも強化される。しかも、通信会社はコストを削減できるので、ユーザー料金が下がる。
 NTTは2008年3月、この最新のネットワークのサービスを始める予定だ。財務が悪化しつつある同社にとって、収益構造を転換する切り札になるはずのNGNだが、筆者は「危機的な状況にある」という。NTT自ら「フレッツの後継」に過ぎないような印象を与えてしまっているからだ。
なぜか。筆者は、「『何がいくらでできるようになるのか』というユーザーの利便性」の視点が、NTTに決定的に欠けていることを指摘する。電話網のNGNへの転換、アクセスとなる光ファイバー三千万回線の敷設など「自己都合な目標」が優先されたために、新サービスの具体像がないのは当たり前だというのだ。
本著は、NTTのグループ会社に勤務経験があるジャーナリストの筆者が、「電話的価値観」にとらわれたNTTの現状を分析し、IP(インターネットプロトコル)時代に生き残れるかを検証している。NGNの未来を占ううえでも、一読をお勧めしたい。

 宗像誠之著・日経コミュニケーション監修
(2008年2月4日発行、日経BP社刊、 1800円+税)



円満退社 江上剛著   出世とは無縁の場末の大手銀行支店長、岩沢千秋(56歳)。34年の我慢の甲斐あって、彼は、めでたく定年退職を迎えた。今日一日を乗り切れば、念願の退職金を手に入れられるのである。ところが、神様は意地悪だ。至るところに、落とし穴が待っている。岩沢の足を引っ張るのは、愚妻や出来の悪い部下たちだけではない。破綻寸前の融資先、右翼の大物、金融庁の検査官…。岩沢は、絶体絶命のピンチを切り抜けられるのだろうか。
常に、新しい分野の開拓に意欲的な筆者だが、元エリート銀行員らしいリアリティと、読む者を安心させる人への優しい眼差しは健在だ。こういう小説が、多くの読者の共感を呼ぶのではないだろうか。

(2005年11月10日発行、幻冬社刊、1700円+税)